【実施報告】第41回近畿高等学校総合文化祭美術、工芸部門 |
「雨ではない」…その日の早朝に見た東の空と、 救われたような感覚は今も覚えています。近畿 総文祭、近江八幡で何が起きたのか…一人ひと りがその場で何かを見て、感じ、考えたならそれで十分ではないか…なんとか終えた本番直後は、漠然とした想いでした。
今、アートで何ができるのか、高校生と何をすべきか…。美術・工芸部門では、コロナ禍以 前に決まった開催場所や実施内容を見直しまし た。その中で、「アートと人と自然と街」の関わりを問う方向性、地域との連携や ICT の活用、 作品展示や生徒交流と感染防止を両立する方法 を模索しました。2015 年の全国総文祭後から続く生徒育成プログラムでは、昨年は近畿総文祭 の在り方を考えました。2021年3月からは生徒実 行委員会が引き継ぎ、11月の本番までの十数回にのぼる活動では、県内美術部による協同制作の計画やパンフレッ ト原稿作成と取材、PR 動画制作などを行いまし た。試して作りながら走った…11 月 13 日の本 番はその日その時点の到達点でした。
結果的に、ラ コリーナ近江八幡の見学、市街地のヴォーリズ建築や町屋、商店街などに分散 しての作品展示、県内美術部による協同制作、 少人数グループで街を巡り実行委員生徒がファ シリテ-トした対話による鑑賞と交流会、その様子のライブ配信や事前オンライン交流会など、 前例の無い多くのことに挑みました。運営側の ミスは多少ありましたが、参加者からの感想は 概ね好評でした。
12 月12日、第17回目となる最後の生徒実行委員会を近江八幡で開きました。本番の会場で もあったハイド記念館に、7校 29 名の委員のほ ぼ全員が集まりました。
約1ヶ月が経ち、記憶や印象も薄れたのではないかと思っていました が杞憂でした。約3時間、近畿総文祭を振り返り、 その成果や今後の展開を話し合いました。一人 ひとりが自分の言葉で今の想いを皆に語りました。頷きながら聞きあう姿が、確かにそこにあ りました。
《滋賀県実行委員生徒の感想》
■アートを通じて人も街も作品も繋がるさまを 目の前で見て、自分もそれに巻き込まれて、アートの持ってる力を感じました。この生徒実行委 員会のメンバーで本気で頑張れて、そんな仲間 が出来たことは、美術をやってきたからこそ経 験出来たことだと感じます。街全体を展示会場にしてしまったのを見て、それまで自分が思っ ていたよりいろんなことが出来るんだと分かっ て、同時に自分で自分に制約をかけてたことに も気づきました。前より柔軟に自由に物事を捉えて、色んなことに興味が出てきたし、なんで も怖がらずに挑戦したいと思いえるようになり ました。
■近畿総文祭という 1 日のために 1 年以上をか けた達成感は大きいです。初めて開催する側に まわって、色々な準備の大切さを知りました。 実行委員の仲間や、街の取材や事前交流会を通して多くの人とも出会えました。本番の鑑賞交 流会では、多くの参加生徒から「楽しかった」 という声を聞けて、とても嬉しかったです。み んなが気兼ねなく話せて活動できる実行委員会のあの空間が好きなので、これで最後だと思う となかなかさみしかったです。
■鑑賞交流会で、グループで 1 つの作品につい て話して疑問を投げかけて深まる感じがとても面白かったです。様々な繋がりを学んだり、色 んな人と協力したりと、人生で大切なものを得 ることができました。後日、近畿総文祭を振り 返ってみんなで話し合うことも楽しくて、色んなプラスの面が見えてきて、自分の成長を再確 認できた気がしました。
■本当に自分の中の美術が大きく変わりました。 制作した後のこと、作品の見せ方、美術で人や街がどう動くのかということも考えました。こ れは私に 「 作品を制作したその先 」 を考えさせ る大きなきっかけとなりました。アートの持つ 力や、何かを企画運営することの大変さと楽しさ、達成感を直に感じたことで、進路への考え も広がりました。
《第 41 回近畿高等学校総合文化祭 滋賀大会 美術・工芸部門》
■部門テーマ 「アートと人と自然と街」
■作品展示 10府県代表作品83点
(京都、大阪、和歌山、奈良、兵庫、鳥取、福井、三重、徳島、滋賀)
11 月 13 日(土曜日)10:00 ~ 17:00
11 月 14 日(日曜日)10:00 ~ 12:00
■事前活動(オンライン)
・「事前学習交流会1」8月 20 日(金)13:30 ~ 14:30
参加予定者の交流および建築家藤森照信さん(ラコリーナ近江八幡等の設計)への
質問を考える
・「事前学習交流会2」9月4日(土)13:30 ~ 14:30
建築家藤森照信さんへの取材活動およびそのまとめ
■行事 11 月 13 日(土)
10:00 ~ 16:00 □
10:00 ~ 11:10 □施設見学会
(ラ コリーナ近江八幡、施設及び社屋内、グループ見学)
13:00 ~ 13:15 開会式(ヴォーリズ学園教育会館)
部会長挨拶
滋賀県 代表生徒挨拶
次年度開催和歌山県代表生徒挨拶
(滋賀大会スタッフパーカー贈呈)
日程説明
13:15 ~ 13:40 記念講演会(オンライン)
講師紹介
講師 建築家 藤森照信先生
演題 「建築と未来、高校生へのメッセージ」
お礼のことば
第 41 回近畿高等学校
13:40 ~ 16:00鑑賞交流会(グループ別、市街地散策)
・自己紹介
・鑑賞交流活動 市街地を巡り、5つの展示会場や美術展、商店街に展示された美術作品の鑑賞と対話を通した交流活動を行う
[鑑賞作品]
各府県代表作品、滋賀県内高校美術部共同制作「しがら」
美術展作品「NO-MA 企画展」
[作品展示会場]
ヴォーリズ学園ハイド記念館、白雲館、旧八幡郵便局、酒游館、
まちや倶楽部
[散策場所]
すわい会館、ボーダレスアート・ミュージアム NO-MA、ほか市街地
・記念撮影 ・閉会あいさつ(オンライン)
※開会式、講演会と鑑賞交流会の様子は、
Youtube からライブ配信を実施。
□滋賀県生徒実行委員企画作品「しがら」
・和紙インスタレーション「しがら」(90 ㎝× 3m /各校美術部共同制作)22 校27作品
・レコードジャケットサイズ 「しがら」(平面作品/個人制作)18 校109作品
・オリジナルゆるきゃら 「しがら」(立体作品/個人制作)11 校 26 作品
■スタッフパーカー(藤森照信先生の直筆イラスト)
■新聞掲載
読売新聞滋賀版朝刊2021.11.14